柏書房株式会社KASHIWA SHOBO

近刊

日本とロシア 忘れられた交流史

400年の厚みある日露関係の多面性を、色とりどりのエピソードとともに再構築。ヒト、モノ、情報の流れに着目した新しい入門書!

定価
2,420円(本体 2,200円)
刊行
2025/04/24
ISBN
9784760156030
判型
四六判
ページ数
352
ジャンル
歴史・地理

内容・目次

内容

国境も定かでなく、
互いに未知の存在だった時代から、
私たちはいかに出会い、交流してきたのか? 


大昔から衝突と融和を繰り返しながら、濃密な交流を展開してきた日本とロシア。戦争や領土問題など、20世紀の対立の陰に隠れ、歴史の暗がりに埋もれてしまった400年の厚みある関係の多面性を、色とりどりのエピソードとともに生き生きと再構築。


モノクロ図版約100点、カラー図版約30点と、ビジュアル資料も充実。ヒト、モノ、情報の流れに着目した新しい入門書! 


“日露関係史を基軸に国際関係史を教えてきた私は、よくこのようなフレーズで両国が歩んだ道程を説明します。日本とロシアは「逆転を繰り返した関係」だと。常に暗いイメージだったわけではなく、もちろんずっと良いイメージだったわけでもなく、「先生」から「ライバル」へ、「敵国」から「同盟国」へと、ジェットコースターのように激しく上下左右に揺れながら、何度もその関係を展開あるいは転回させてきた、ということです。そのダイナミズムを一緒に追究していきましょう。[…]目指すのは、各時代を生きた、そして近くて遠い日露間を行き来していた様々な人の「動き」や「顔」が見える、生き生きとした日露関係史です。”(「はじめに 日露関係の出発点」より)


※ロシア語のタイトル表記はЯпония и Россия: забытая история контактов (XVII в. – 1917 г.) である。


【著者略歴】
シュラトフ・ヤロスラブ〈Ярослав Шулатов〉
1980年生まれ。ロシア極東出身。早稲田大学 政治経済学術院 教授。歴史学博士(2005年、ハバロフスク国立教育大学)、法学博士(2010年、慶應義塾大学)。著書に『協力に向かって――1905-1914の日露関係』(ロシア語)、共著書に『日露戦争とサハリン島』(北海道大学出版会)、『ソ連と東アジアの国際政治 1919-1941』(みすず書房)、『日露関係史――パラレル・ヒストリーの挑戦』(東京大学出版会)、『ロシア革命とソ連の世紀 1 世界戦争から革命へ』(岩波書店)、『日本史』(ロシア語)など。


目次

はじめに 日露関係の出発点――忘れられた交流、その多面性


第1部 初めての対面から、正式な国交樹立まで
第1回 ロシアに渡った初の日本人――ニコラスの旅
第2回 相互認識の起源――日本とロシア、それぞれのイメージ
第3回 漂流民と日本語学校――流れ着いた最初の使者、立川伝兵衛
第4回 日本を目指すロシア人――「元文の黒船」事件
第5回 ロシア脅威論の出現――ある冒険家をめぐるスキャンダル
第6回 外交の萌芽―― 蝦夷地での交渉と大黒屋光太夫の長い旅
第7回 大黒屋光太夫の帰国――そしてロシアからの遣日使節
第8回 すれ違う両国――江戸幕府の強硬姿勢、露米会社の太平洋進出
第9回 平民による、日本人初の世界一周――漂流民たちの数奇な運命
第10回 嵐の前夜――矛盾に満ちたレザノフの肖像
第11回 初めての衝突――「文化露寇事件」がもたらした波紋
第12回 ゴロヴニン捕囚事件――「裏切り湾」、地名に刻まれた記憶
第13回 捕虜をめぐる駆け引き――ロシア研究、日本研究の進展
第14回 高田屋嘉兵衛の外交――「民間人」がもたらした平和的決着
第15回 日本の「ボロジノ」――「大東諸島」につけられた別名の謎
第16回 日本開国前夜の極東政策――激化する東アジアをめぐる列強間競争
第17回 開国を迫るロシア――アメリカとの競争
第18回 長崎での開国交渉――第一ラウンド閉幕
第19回 日露国交樹立――親密な条約、プチャーチンの手腕


第2部 加速する外交、多様化する相互認識
第20回 「ピョートル・モデル」――近代化の師としてのロシア
第21回 加速する両国関係――開国後の「最初の危機」を乗り越えて
第22回 箱館と長崎――日露交流を担った町
第23回 日本における正教会 ⑴ ――ニコライの来日
第24回 日本における正教会 ⑵ ――知識人にとどまらないレベルの交流
第25回 ロシアを目指す日本人 ⑴ ――「密航者」橘耕斎、「外交官」志賀親朋
第26回 ロシアを目指す日本人 ⑵ ――初めての「留学生」、市川文吉の活躍
第27回 ロシアを目指す日本人 ⑶ ――嵯峨寿安の「シベリア横断」
第28回 最後の平和的な国境画定――榎本武揚と樺太千島交換条約
第29回 宮廷外交 ⑴ ――アジアを外遊するロシア人皇子たち
第30回 宮廷外交 ⑵ ――「ツァーリ」の国、「ミカド」の国
第31回 大津事件――ニコライ皇太子来日と襲撃の衝撃
第32回 メンデレーエフ家の謎――ロシアの偉大な科学者と、日本人の子孫
第33回 革命運動家と明治日本――ノーベル賞学者メーチニコフの「兄」の功績
第34回 日露戦争――「第0次世界大戦」
第35回 日露同盟の興亡――日露協約、第一次世界大戦、ロシア革命
第36回 日本研究の勃興――東のスパルヴィン、西のポズドネーエフ
最終回 ロシア日本学の黄金時代――粛清、亡命、波乱の時代を生きた天才たち


おわりに 残された課題――交流、そして探究の旅は続く
資料・参考文献