人類と時間 時計職人が綴る小さくも壮大な歴史
一つひとつの傷、過去の修理人が見えないところに残した跡……希少な女性時計職人の手と目を通して、人類と時間の歴史が見えてくる!
- 定価
- 2,970円(本体 2,700円)
- 刊行
- 2024/12/10
- ISBN
- 9784760155804
- 判型
- 四六判
- ページ数
- 399
- ジャンル
- 歴史・地理
内容・目次
内容
一つひとつの傷、
過去の修理人が見えないところに残した跡……
希少な女性職人の手と目を通して、
人類と時間の歴史が見えてくる!
【内容】
時計――時間を計る小さな機械の発明は、人間の文化にとって、印刷機と同じぐらい重要な意味を有していた。最初期の装置(骨でつくったもの、影を調べるもの、水や火や砂を流すものなど)を経て、のちの発明家たちが自然の動力と工学とを結びつけたことから新たな機械装置である大時計が生まれた。そしてさらなる技術の進歩の末に、時計はついに携帯可能なものとなり、世界を征服できるほどの正確さを獲得していく(人間とともに、エヴェレストの頂上やマリアナ海溝の深淵、北極や南極はおろか月にまでたどり着く)。
本書では、イギリス史上初めて「時計学」の博士号を取得した時計師となった著者が、その歴史をひもときながら、知られざる時計製造の世界へと読者を導いていく。登場する時計の多くは、著者が実際に扱ったもの、修理したものであり、そこからは小さな個人の歴史も立ち上がってくるだろう。
“自分が生まれる前につくられた時計、メンテナンスをすれば自分が死んだあとも数世紀にわたり生き続けるであろう時計、それらが紡ぐ物語の新たな一章に自分がなることを意識しながら、私はそこにある命の証を拾い集める。時計職人とはつまり、これらの製品を守り、その歴史を吸収し、新たな人間とのつながりを生み出す準備をする管理人なのである。”
――「後ろ向きの前書き」より
宗教、交易、探検、帝国、労働、階級、ジェンダー、戦争、死生観、技術革新……携帯可能な機械が、この世界を動かしてきた。飛ぶような速さで過ぎていき、ナノ秒単位で測られるようになった現代的時間の中で、自分のペースで時間と向き合う読書体験をあなたに。
【図版について】
◎口絵には、貴重で美麗なフルカラー写真14点を掲載!
16世紀の置き時計、17世紀半ばに人気を博した「形態時計」、18世紀に流通し時計産業のあり方を一変させた「オランダ偽造品」、ブレゲが発明した初期の自動巻き時計(ペルペチュエル)など。
◎本文には、手仕事を感じさせる挿絵40点近くを掲載!
カバー含め、イラストはすべて工房「ストラザーズ・ウォッチメーカーズ」共同設立者にして、著者と同じ時計職人である夫のクレイグ・ストラザーズが手がけたもの。
※本書はHANDS OF TIME: A Watchmaker’s History of Time by Rebecca Struthers (with illustrations by Craig Struthers and photographs by Andy Pilsbury) の日本語訳である。
【著者略歴】
レベッカ・ストラザーズ〈Rebecca Struthers〉
バーミンガム出身の時計職人、歴史家。2012年、バーミンガムのジュエリー・クォーターに、同じく時計職人である夫のクレイグとともに工房「ストラザーズ・ウォッチメーカーズ」を共同設立。伝統的な機器と職人技を駆使して、アンティーク品の修復やオーダーメイドの時計製作を行なっている。イギリスでは数少なくなった、一から時計をつくれる時計職人の1人である。2017年にはイギリス史上初めて、時計学の博士号を取得した時計師となった。夫のクレイグ、愛犬のアーチー、愛猫のアラバマとイスラ、ネズミのモリッシーとともに、スタッフォードシャーに在住。
【訳者略歴】
山田美明〈やまだ・よしあき〉
英語・フランス語翻訳家。訳書に、ダグラス・マレー『大衆の狂気――ジェンダー・人種・アイデンティティ』(徳間書店)、エマニュエル・サエズ+ガブリエル・ズックマン『つくられた格差――不公平税制が生んだ所得の不平等』(光文社)、ジョセフ・E・スティグリッツ『スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM』(東洋経済新報社)、レベッカ・クリフォード『ホロコースト最年少生存者たち――100人の物語からたどるその後の生活』、ソーミャ・ロイ『デオナール アジア最大最古のごみ山――くず拾いたちの愛と哀しみの物語』(以上、柏書房)、他多数。
目次
後ろ向きの前書き――ジェフ 1971年3月10日
1 太陽を追う
2 精巧な装置
3 光陰矢のごとし
4 黄金時代
5 時間を偽造する
6 革命の時間
7 時計に合わせて働く
8 冒険に連れ添う時計
9 加速する時間
10 人間と機械
11 瀬戸際
時計の修理の仕方――大まかな(かつ個人的な)手引き
用語集
謝辞
原注
参考文献
その他の情報源
写真クレジット