手紙 その消えゆく世界をたどる旅
歴史の節目で活躍してきた、その小さくも偉大な紙片の物語
- 定価
- 3,080円(本体 2,800円)
- 刊行
- 2015/11/01
- ISBN
- 9784760146420
- 判型
- 四六判
- ページ数
- 552
- ジャンル
- 文学・エッセイ・ノンフィクション
内容・目次
内容
紀元前に存在した賢人による手紙の手引き、800年も残る情熱的な愛の往復書簡、未来に公開されることを前提に書き残された作家の手紙…。かつて、世界は手紙で回っていた――歴史の節目で活躍してきた、その小さくも偉大な紙片の物語。
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手紙は、書いた者の人生を拡大して見せ、その心の内を明らかにし、人間理解を深めさせてくれる。手紙が証拠となって、伝統や歴史が編み直されることもある。かつて世界は手紙で回っていた。(略)過去の人々なら手紙のない世界は酸素のない世界に等しいと言い切るに違いない。(略)読んだり書いたりを通して互いのことを思いやり、物事に先だって思考してきた自分たちの過去を言祝ぐ。それはすなわち、人間の優しさについて考えることであるかもしれない。
この本を書こうと思った動機は単純だ。つまりは「音」に触発されたのだ。到着した手紙がドアマットに落ちる――青いエアメールは霞のようにふわりと、返信葉書を同封した招待状はこれみよがしにドサリと、うれしい御礼状はクシャミのような音を立てて落ちる――手紙によってもたらされる知らせは、摩訶不思議な、人を変容させる力を持っている。(略)電子メールは耐久性がある一方、いざそれを入手しようと思えば、手紙以上に難しい。そのパラドックスにわれわれはようやく気づきはじめた。電子メールのフォルダーをあけるとき、われわれは顔を輝かせるだろうか? 電子メールは受取人をせっつき、手紙は優しく触れてくるのだ。(本文より)
【目次】
1 手紙のマジック
2 ヴィンドランダのあいさつ状
3 キケロ、セネカ、小プリニウスの慰め
4 最も古い愛の形
5 完璧な手紙の書き方 その1
6 雪であろうと雨であろうと穏やかな天気のノーフォークであろうと……
7 完璧な手紙の書き方 その2
8 売りに出される手紙 その1
9 なぜジェイン・オースティンの手紙はつまらないのか
(そして、新たに改善された郵便事情)
10 永遠の命を持つように思える手紙
11 完璧な手紙の書き方 その3
12 売りに出される手紙 その2
13 より最近の愛の形
14 現代における手紙の達人
15 受信箱(インボックス)
エピローグ――親愛なる読者へ