ロシアのオリエンタリズム 民族迫害の思想と歴史
大ロシア主義下におけるコロニアリズムの思想史的変遷をたどる
- 定価
- 5,500円(本体 5,000円)
- 刊行
- 2000/01/01
- ISBN
- 4760118438
- 判型
- ページ数
- 416
- ジャンル
- 歴史・地理
内容・目次
内容
カフカス、中央アジアなどに暮らす周辺民族へのロシアの蔑視はツァーリ時代から始まった。それ以後、ソ連邦崩壊にいたるまで、ロシアによる植民地支配体制を正当化する言説は姿形を変えこそすれ、ステレオタイプとして再生産され続けたのである。本書は、ヨーロッパ人からは東洋人視される一方で、自らをスラブ人としてアイデンティファイし、周辺民族へとその東洋蔑視的まなざしを転嫁していったロシアの知識人たちの言説の数々を、プーシキン、グリボエードフ、レールモントフ、ドストエフスキーらの文学作品やレーニン、スターリンなどロシア革命以後の政治家たちの言葉のなかから丹念に掘り起こした労作である。
目次
序 ロシアによる東洋蔑視第一部 東洋蔑視の起源
第1章 ロシアの劣等感と優越感――東西の狭間で
ピョートルの改革/東洋としてのロシア/劣等感/東洋研究の系譜
第2章 神秘と冒険のカフカス――ロマン主義作家と東方世界
作家と流刑/カフカスの植民地化/エルモーロフ将軍の「慈悲深い精神」/前線の
作家/北カフカスの現実とプロパガンダ/ロマン主義と東洋蔑視/疎外された
英雄レールモントフ/ロシアによる「救済」の使命/ロマン主義との訣別
第3章 東洋の亡霊――ドストエフスキーにとっての中央アジア
クリミアの戦争/ドストエフスキーのジレンマ/第三のローマとしてのロシア/ゲオ
ク・テペの陥落/石鹸の行商に適任/世界帝国のヴィジョン
第4章 ツァーリ政府の植民地支配
ロシアの東方進出/植民地化されたカフカス/分割と統治/併合地におけるツァー
リ政府の戦術/征服者による都市建設/自己賛美レトリックと神話の宣伝
第二部 マルクス主義、ナショナリズムと民族問題
第5章 ロシア革命とレーニンの民族政策
自己支配のアイロニー/領土のごまかし/暴力とイデオロギー/シューヤ物語/
東洋人の迫害/人口構成の変更を狙った戦略/大国ショービニズム
第6章 大地の冒涜――ソ連における環境破壊
第7章 歴史と文化の抹殺――ソ連の言語政策と非ロシア民族
言語のヒエラルヒーと言語政策/歴史の切断/単一の文学モデル/民衆叙事詩と
の国の戦い/トラクター頌詩が文学の覇権/文化へのさらなる侵略
第8章 魂の技師-革命後のロシア人作家と東洋
任務を帯びた作家たち/定着した偏見/革命の新たな英雄/ジャン――魂なき存
在/自己正当化の積み重ね/グラスノスチ
第9章 民族の再生――グラスノスチとソ連崩壊
バック・トゥ・ザ・フューチャー/移植の拒絶
解説(袴田茂樹)
訳者あとがき
索引・原註・参考文献