パリのすてきなおじさん
パリの街角で、おじさん達に「人生で大切なこと」を尋ねたインタビュー&スケッチ集。難民・テロ・LGBT…世界の今が見えてくる。
- 定価
- 1,760円(本体 1,600円)
- 刊行
- 2017/10/24
- ISBN
- 9784760149117
- 判型
- B6変
- ページ数
- 252
- ジャンル
- 文学・エッセイ・ノンフィクション
内容・目次
内容
難民問題、テロ事件、差別の歴史……。
世界は混沌としていて、人生はほろ苦い。
だけどパリのおじさんは、今日も空を見上げる。
軽くて、深くて、愛おしい、おじさんインタビュー&スケッチ集
★主なメディア紹介
CREA 金井真紀氏と中島京子氏が対談 (2017/12月号)
NHK第1「かれんスタイル」 金井真紀ゲスト出演(2018/11/16)
朝日新聞 折々のことばで紹介(11/22付朝刊)
サンデー毎日 岡崎武志氏による所要掲載(11/26)
日経新聞 陣野俊史氏による書評掲載(11/30夕刊)
HONZ 鰐部祥平氏による書評掲載(12/8)
日経MJ 「書店映え」本のとして掲載(12/13日付)
週刊新潮 東えりか氏による書評掲載(12/7発売号)
週刊金曜日 石井千湖氏による書評掲載(12/8発売号)
ダ・ヴィンチニュース ガンガーラ田津美氏による書評(12/28)
週刊女性 南陀楼綾繁氏による著者インタビュー掲載(12月/年末合併号)
anan 瀧井朝世による書評インタビュー掲載(2018/1/12発売号)
毎日新聞 著者インタビュー掲載(1/14)
J-WAVE「RADIO DONUTS] 金井真紀出演(2018/1/15放送)
プレジデント 伊藤詩織氏による著者インタビュー掲載(1/15発売号)
2nd 渡辺祐氏による書評掲載(2018年3月号)
NHKラジオ「すっぴん!」 金井真紀・広岡裕児出演(1/22)
日経ビジネス 河野通和氏による書評(1/22発売号)
TBS系「王様のブランチ」で特集(2/17放送予定)
★本書は帯が四種類。それぞれ別のおじさんと言葉がかかれています。
書店でぜひお手に取ってご覧ください!
★重版記念にポップ&ポスターを制作しました。ご入用の書店様は
takeda@kashiwashobo.co.jp宛てに、「ポップorポスター画像希望」のタイトルで、メールをお送りください。PDFデータを速やかに返送いたします。
<推薦のことば>
中島京子さん(作家、『小さなおうち』『ゴースト』)
「パリは人種のるつぼ、おじさんのサラダボウルだ。
読めば21世紀の隣人の姿が浮かび上がり、
クスクスも赤ワインも、より味わい深くなる。」
栗原康さん(政治学者、『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』『死してなお踊れ 一遍上人伝』)
「こんにちは、アンジェリーナ・ジョリーです。パリのおじさんは名言をはく。
「ギャンブルしない人間は信用できない」。「人生を学んでいるあいだに手遅れになる」。
生きることはギャンブルだ。いま死んでもいい、そう思えることしかやっちゃいけない。
人生に地図なんてない、学ぶな。木をみず、森をみず。いくぜ、ミスター無責任。チンチン!」
井上哲也さん(大垣書店高槻店・副店長)
「金井真紀さんの言霊(ことだま)には、街の鼓動、人の息吹を感じさせる魔力がある。
頁を開いた瞬間、まるでその場に居合わせているかの如く、眼前にパリの街並みと粋で面白いおじさん達の姿が広がる。 どこから読んでも、楽ししいし、どの掌編も珠玉。
本当にさらっと読めちゃううのだけど、奥底には、現在のパリ、いや世界が抱える深淵なテーマが潜んでいたりする。
パリのおじさんも恰好良いけど、一番すてきなのは言葉の魔法使い〈金井真紀〉だと大阪のおじさんは思うよw」
伊藤詩織さん(ジャーナリスト、『Black Box』)
「登場するおじさんの多くは地位や人種と関係なく、
それぞれの人生、自分自身を受け入れています。そして他人と違うことを恐れていません。
日本も男女問わずそういう人が増えればいいなと思います」
星野智幸さん(小説家、『俺俺』『呪文』『のこった もう、相撲ファンを引退しない』)
「ヘビーな経験も軽やかな生き方も、金井さんの筆にかかると、等しく豊かな人生として描かれる。誰の人生でも価値は同じなんだな、という真実を実感させてくれる吟遊の書。」
安田浩一さん(ジャーナリスト、『ネットと愛国』『ルポ 外国人『隷属』労働者』)
「すてきなおじさん」の話を通して、パリの様々な風景が浮かび上がってきます。
街の豊かな表情が見えてきます。弾んだ声が聞こえてきます。せつない息遣いも響きます。
おじさんたちの知恵と信念と生きざまが、パリに色彩を与えています。
金井真紀さんの味わい深い文章とスケッチで、読者はきっと、これまで知らなかったパリを「発見」することができるはずです。」
飯間浩明さん(国語辞典編纂者、『小説の言葉尻をとらえてみた』)
「昆虫採集のよう、と言ったら取材対象に失礼だろうか。金井さんによる「パリのおじさん採集」。集められたおじさんの実例を眺めていくと、パリそのものが分かり、フランスの現状がどうなっているかも臨場感を伴って伝わってくる」
【★サンプルページ公開】
イタリアに通う弁護士
モンマルトルの老画家
「隠れた子ども」だった人
【★目次】
はじめに(金井真紀)
第1章 おしゃれなおじさん
白と黒にこだわる絵描き/イタリアに通う弁護士/十着しか服を持たない男/アフリカ人街のか
つら屋/LGBTセンターのボランティア
<ちょっと寄り道>カルチェ・ラタンの古本屋
第2章 アートなおじさん
旅するギター作家/下町の彫金師/小劇場の喜劇役者/モンマルトルの老画家
<ちょっと寄り道>フリーメイソン博物館
第3章 おいしいおじさん
元マーケターのワイン屋/老舗クスクス屋の店主/星付きレストランのシェフ/カレー屋街のタ
ミル人
<ちょっと寄り道>パリの地下散歩
第4章 あそぶおじさん
ボールを蹴るベルベル人/PSGファンが集まるバーの店主/カフェで出会った競馬の達人/パリ
在住四十年の日本人ジャーナリスト/競馬場に通う元警官
<ちょっと寄り道>大統領選挙、候補者集会めぐり
第5章 はたらくおじさん
マリの出稼ぎコンシェルジュ/アラブのお菓子を売るユダヤ人/ポルトガルから来た塗装工/中
国・青田出身の出版人
<ちょっと寄り道>同時多発テロの現場へ
第6章 いまを生きるおじさん
「隠れた子ども」だった人/難民申請中のスーダン人/難民支援団体の事務局長/イラクから逃
げてきたクルド人/大衆紙「パリジャン」の記者/癌の研究をしていたベトナム人
<ちょっと寄り道>泡沫候補!
取材後記(広岡裕児)
あとがき(金井真紀)
【「はじめに」を公開】
はじめに
「少年である僕がいるとする。僕は両親が押しつけてくる価値観や物の考え方に閉じこめられている。(中略)ある日ふらっとやってきて、両親の価値観に風穴をあけてくれる存在、それがおじさんなんです」
と、伊丹十三は言った。
あぁ、わたしが若かった頃、どれほどたくさんのおじさんがふらっとやってきて風穴をあけてくれたことか。親戚のおじさん、学校の先生、仕事場の先輩、飲み屋のマスター、旅先ですれちがったおっちゃん……。
わたしはとりわけ風穴を欲するタイプだったのだろう。「このおじさんのはなしを聞いたらおもしろそう」という勘がよくはたらいた。経験を積めば積むほど、「選おじさん眼」は磨かれた。気づいたらわたしは無類のおじさんコレクターになっていた。いまでは自分もおばさんだから、コレクションには年下のおじさんまでずらりと取り揃えている。
本書は、パリ在住四十年のジャーナリスト・広岡裕児おじさんと一緒に作った。初めて会ったのは一年ほど前。その夜、鴨料理を食べながら広岡さんは言った。
「ぼくの商売道具は好奇心」
おぉ、なんという名言。わたしも、そういうふうに仕事をしたい。何度目かに会ったとき、本を作ろうと盛り上がった。パリの路地のすみずみまでを知っている広岡さんと、どんな本を作って遊ぼうか。パリの歴史? パリの街案内? うん、それもいいが……。
「パリのおじさん!」
ひらめいた。パリでおじさんを集めよう。
商売道具である好奇心、と広岡さんが自在に操るフランス語、とわたしの選おじさん眼。この三本の矢を携えて、パリの街を歩きまわり、おもしろいはなしをしてくれそうなおじさんを探した。二週間の取材で、集めたおじさんは六十七人(だったと思う)。
ボールを蹴るおじさん、ギターを弾くおじさん、古本を愛するおじさん……。下は二十五歳(自称)から、上は九十二歳まで。肌の色も宗教も支持政党も性的指向も、てんでばらばら。どうやら世界は、思っているよりずっと込み入っていて、味わい深いようだ。
集めてきたおじさんを謹んで陳列する。ひとりひとり味わっていただけたら幸いである。
金井真紀
<文と絵>金井真紀(かない・まき)
1974年、千葉県生まれ。作家、イラストレーター。著書に『世界はフムフムで満ちている 達人観察図鑑』『酒場學校の日々 フムフム・グビグビ・たまに文學』(皓星社)、『はたらく動物と』(ころから)。うずまき堂代表(部下は猫2匹)
<案内>広岡裕児(ひろおか・ゆうじ)
1954年、神奈川県生まれ。フリージャーナリスト、シンクタンク研究員、異文化間コンサルタント。フランス在住。著書に『皇族』(中央公論新社)『EU騒乱』(新潮社)、『エコノミストには分からないEU危機』(文藝春秋)など。