0番目の患者 逆説の医学史
医者だけが英雄か?患者なくして医学の発展はなかった!コロナ後の世界で犯人捜しを始める前に知るべき病者たちの犠牲と貢献の物語。
- 定価
- 2,200円(本体 2,000円)
- 刊行
- 2020/12/10
- ISBN
- 9784760153060
- 判型
- 四六判
- ページ数
- 280
- ジャンル
- 文学・エッセイ・ノンフィクション
内容・目次
内容
病気を感じる人たちがいるから医学があるわけで、
医者がいるから人びとが
彼らから自分の病気を教えてもらうのではない。
――ジョルジュ・カンギレム『正常と病理』より
■内容
これまでの医学史は、
患者をないがしろにしたまま、
医師の手柄話、治療法や試行錯誤の過程など、
もっぱら医師たちに焦点を当てつづけてきた。
しかし、医学者だけが英雄なのか?
当前のことだが、患者なくして医学の発展はなかった。
野戦病院や臨床の現場、検査室、診察室で
自らの身体や傷口を辛抱強くさらしてきた者たちこそが、
医学の歴史に大きな貢献をしてきたのだ。
隔離されたチフスのメアリー、
上流階級の見世物にされた女性ヒステリー患者、
ある仮説のために女として育てられたデイヴィッド、
死してなお自らの細胞を研究されつづけたヘンリエッタ、……
本書では、輝かしい歴史の裏側に埋もれた、
病者たちの犠牲と貢献にスポットを当てていく。
コロナ後の世界において、
最初に感染した者たちへのバッシングは絶えない。
しかし、犯人捜しにも魔女狩りにも意味はない。
Covid-19の感染拡大を受けたロックダウン宣言の直前に
フランスで出版されたこの本に登場する患者たちの物語が、
私たちにそのことを教えてくれるだろう。
■「Patients Zero」とは?
感染症学では、集団内で初めて特定の感染症にかかったと見なされる患者のことを「インデックス・ケース」または「ゼロ号患者(ペイシェント・ゼロ)」と呼ぶ。微生物やウイルスの研究が進み、詳しいことがわかるようになるにつれ、ときに最初の感染者を特定できるまでになった。本書では、この「ゼロ号患者」という言葉の意味を医学、外科医学、精神医学、薬理学のあらゆる分野に意図的に拡大解釈して適用することにしている。
著者プロフィール
リュック・ペリノ/Luc PERINO
1947年生まれ。医師、作家、エッセイスト。熱帯医学と疫学で学位を獲得。アフリカ、中国、フランス農村地帯で長年、臨床経験を積んだ。リヨン大学医学部で医学史や疫学などを教える傍ら、医学や生物学の知識を一般向けに噛み砕いて伝えるために小説を含む著作に励んでいる。培った知識や経験に基づき、現代の医療システムおよび医療関連市場の歪みや逸脱を、ユーモアを交えて指摘、批判している。
訳者プロフィール
広野和美〈ひろの・かずみ〉
フランス語翻訳者。大阪外国語大学卒。長年、理系を含む実務翻訳に携わり、近年書籍翻訳も手がけている。訳書に『フランスの天才学者が教える脳の秘密』(TAC出版)、『パリとカフェの歴史』(共訳、原書房)、『北欧とゲルマンの神話事典』(共訳、同)、『フランス式おいしい肉の教科書』(パイ インターナショナル)、『フランス式おいしい調理科学の雑学』(同)などがある。
金丸啓子〈かねまる・けいこ〉
フランス語翻訳者。大阪外国語大学卒。訳書に『フランスのお裁縫箱』、『ピエール・エルメ サティーヌ』(ともに青幻舎)がある。また、早川書房からノンフィクションの訳書が刊行される予定。
目次
日本語版によせて/はじめに第1章 タンタン
第2章 麻酔のゼロ号患者たち
第3章 人格が変わってしまったフィネアス
第4章 ヒステリーのヒロインたち
第5章 ジョセフ少年
第6章 ニューヨークの女性料理人
第7章 アウグステ
第8章 ジェンダーの蹂躙
第9章 ふたつの特別な数字
第10章 ウンサの沈黙
第11章 永遠に生きるヘンリエッタ
第12章 海馬の冒険者たち
第13章 マッキー夫人
第14章 無原罪の御宿り
第15章 吐き気を催す事件
第16章 ジョヴァンニのアポリポタンパク質
第17章 悪魔と奇跡の生還者
第18章 いつもと違うインフルエンザ
第19章 脳のない男
おわりに/参考文献