柏書房株式会社KASHIWA SHOBO

七転びなのに八起きできるわけ

ことわざや故事成語に潜む矛盾や謎をミステリ作家が論理的に解き明かす!言葉にまつわる「イグノーベル的考察」を紡ぐ超絶エッセイ!

定価
1,870円(本体 1,700円)
刊行
2021/09/22
ISBN
9784760154067
判型
四六判
ページ数
230

内容・目次

内容

すべてのことわざには謎(ミステリー)がある!――
「《七転び八起き》だと数が合わないんじゃない?」「《棚からぼた餅》が発生する傾きは?」「《へそが茶を沸かす》ための条件とは?」「《二階から目薬》で殺人は可能?」「《捕らぬ狸の皮算用》の見積もり額は?」「《穴があったら入りたい》ときの穴の深さって?」――普段、何げなく口にしていることわざや故事成語・慣用句だが、いざその言葉の表す意味を〈検証〉してみると、謎や矛盾に満ちたものだったり、現実にはありえないシチュエーションだったりするものがいかに多いことか。さらに、誤解に基づく事象を語源としている場合もあり、かならずしも〈真実〉をついているとは言い切れないものばかりなのである。
こうした「ことばの謎」の数々を前に、ミステリ作家・浅暮三文が立ち上がる! 時に論理的、時に妄想を爆発させて展開、単なる語源的解説にとどまらない自由な発想を駆使した、言葉にまつわる「イグノーベル」的考察を存分に楽しめる超絶エッセイ!!


【著者プロフィール】
浅暮三文(あさぐれ・みつふみ)
小説家。1998年、第8回メフィスト賞受賞作『ダブ(エ)ストン街道』でデビュー。2003年第56回日本推理作家協会賞を『石の中の蜘蛛』で受賞。他の作品に『ラストホープ』『実験小説ぬ』『ポルトガルの四月』『誘拐犯はカラスが知っている』など多数。著作はイタリア、韓国で翻訳され、『10センチの空』は中学校教科書に採用された。日本推理作家協会会員。最新刊は『困った死体』。


目次

PART1 ことわざの謎は科学で解明できる(と思う)

「棚からぼた餅」が発生する傾きは八~十五度だ。

「七転び八起き」はタイムトラベルか二人羽織りだ。

「へそが茶を沸かす」には四十℃以上、二時間半でよい。

「二階から目薬」による殺人は可能だが、コントロールがいる。

「穴があったら入りたい」ときの穴は百六十四センチ。

「溺れる者は藁をも掴む」なら九万六千本。

「耳に胼胝ができる」なら蛸は吸盤にできる。

「来年のことを言うと鬼が笑う」のは新年がまだ去年だからだ。

「馬耳東風」のメッセージはお天気情報満載だ。

「火のない所に煙は立たぬ」どころか人間まで燃える。


PART2 ことわざの謎は歴史学で解明できる(だろう)


「コロンブスの卵」はスパニッシュのゆで卵だった。

「藪から棒」な事態は京都祇園あたりが発祥だった。

「雨が降ろうが槍が降ろうが」、小さなワニが降ろうが。

「酒池肉林」の池には鯉、肉は子豚の丸焼きだ。

「聞いて極楽、見て地獄」へと続く狭き門は九十一・二センチ。

「深窓の令嬢」は楊貴妃(ぽっちゃり型)だった。

「メートルを上げる」には六年の大旅行となる。

「柳の下の泥鰌」は東京京橋あたりにいた。

「男子家を出れば七人の敵」とは豊臣家臣(十人かも)。


PART3 ことわざの謎は生物学で解明できる(のかな)


「蛇に睨まれた蛙」は剣豪並みに強い。

「喉から手が出る」手は生物学的には舌だ。

「雀百まで踊り忘れず」だが兵庫県間子地区では忘れている。

「どこの馬の骨ともわからぬ」馬は役所でわかる。

「目から鱗が落ちる」のはヘビでは当たり前だ。

「清水の舞台から飛び降りる」とあまり死なない。

「火事場の馬鹿力」は成人男性で百六十九キロである。

「弘法も筆の誤り」は脳の書き換え(世界各国でも)。

「木に縁りて魚を求む」なら乾期のタイかベトナムへ。

「頭隠して尻隠さず」は成人男女ともハンカチで防げる。


PART4 ことわざの謎は社会学で解明できる(かしら)


「ハリネズミのジレンマ」は、そもそも起こらない。

「帯に短したすきに長し」は二・四~三・二二メートル内の紐だ。

「横紙破り」は横を弱い者いじめしている。

「一線を画す」と福島県では山に登れる。

「高嶺の花」は昔は手が届く桜だった。

「苦しい時の神頼み」はご近所で済ませられる。

「同じ穴のムジナ」の共犯者はキツネである。

「輪をかける」と縁起が良い。

「なくて七癖」には貧乏神が憑いている。


PART5 ことわざの謎は経済学で解明できる(はずだ)


「捕らぬ狸の皮算用」は一万五千円(内経費九百円)。

「爪に火を点す」とくさいだけで節約できない。

千百五十円で足りる「地獄の沙汰も金次第」。

「重箱の隅をつつく」とかまぼこと野菜で安上がりだ。

「同じ釜の飯を食う」のは古墳時代の豪族、メニュウは豪華。

「江戸の敵を長崎で討つ」には興行収益三億円以上が必要。