約束するサル 進化から見た人の心
大事な約束を破るヒトなんてゆるせない!
- 定価
- 2,200円(本体 2,000円)
- 刊行
- 2002/09/01
- ISBN
- 4760122761
- 判型
- 四六判
- ページ数
- 240
- ジャンル
- 自然科学・建築
内容・目次
内容
ヒトは心の進化によって、淘汰に打ち勝ってきたのだ
なぜヒトは、困ったヒトを見ると助けてしまうのか?
それは、かわいそうだからなのか、見捨てると良心がうずくからなのか。
ふだんあまり考えないそんなヒトの行動を進化から読み解くと、そこには、淘汰からのがれるための戦略が浮き上がってくるのです。
つまり、「助けなきゃ!」と思ってしまう、その心の働きこそが、長い長い時間の中で生き残るための手段であったに違いないのです。ではなぜ、手段なのかと考えていくと、そこからヒトに共通する心の働き、パターンが見えてくるにちがいないのです。そして、ひとつの核心に行き当たります。
「約束するサル」、「ヒトは約束を必要とするサル」であり、それが、文化や社会を作っている大本であるという核心なのです。
本書には、生き残ってきたヒトの共通する心の働きを読み解くための問いを日常の中からたくさん拾い上げています。例えば……
信頼できるヒトとできないヒトを顔だけで判断しているのはなぜか?
感情の発達がなぜ進化に役立ったのか?
知能はなぜ発達しなければならなかったのか?
そんな漠然とした問いに「なるほど~」とうなずかせてくれる、若きサル学者によるインチキなしのわかりやすい人間学です。
目次
はじめに
第1章 石器時代の心
山手線ホーム転落事故の「なぜ」/四つの「なぜ」/自然淘汰による適応と進化/行動も進化する/行動はすべて「意識的」ではない/ボトムアップとトップダウン/心のリバース・エンジニアリング/ヒトがたどってきた道/進化には時間がかかる
第2章 セックスとジェンダーのはざまで
男と女/性は何のためにあるのか/なぜ雄と雌がいるのか/なぜ「くびれ」が気になるのか/ところ変われば好みも変わる?/男は美人が好きで、女は金持ちが好き?/日本ではどうなのか/やはり、ところ変われば…
第3章 子はかすがい
2人のきょうだいと8人のいとこ/ヒトだけがつくる家族/子育てをめぐる雄と雌のかけ引き/女性の二股かける戦略/この子誰の子?/子供は本当に父親に似ているのか/女の子は父親に似る?
第4章 情けは人の為ならず
人はなぜ助け合うのか/約束するサル/裏切り者検出装置/裏切り者の顔を見分ける/裏切り者記憶装置?/裏切り者の顔は忘れない/お人好しが最後に勝つ/社会的ジレンマヘの適応/感情は自らを縛りつける鎖
第5章 心を造ることはできるのか
2001年の人工知能/人工知能の精神分析医/人間のもつ直感とは/フレーム問題/「心」は遺伝子と外界をつなぐ/知能はなぜ進化したのか/人工知能に「身体」を与える/コミュニケーションとヒューマノイド・ロボット
第6章 「生物学的決定論」を超えて
科学者は何を調べているのか/統計的に有意な差とは/代表値は代表値でしかない/「である」と「べし」の違い/「文化」とは何か/文化をどう築いていくのか
あとがき
引用・参考文献